
サマリー
一般社団法人あんしんの輪は、当法人の身元保証・生活支援サービスを利用する会員のうち一部の57名について記録を集計し、身元保証を必要とする高齢者の実像を分析しました。
その結果、契約前の時点で「入院時などの緊急連絡先に書ける人が一人もいなかった」利用者が66.7%にのぼることが明らかになりました。また、利用者の未婚率は50.9%と、65歳以上人口全体(約6.2%)のおよそ8倍という水準でした。
- 対象:当法人の会員のうち、主要項目が確認できた57名
- 主な結果:緊急連絡先が「いなかった」66.7%/未婚率50.9%/契約時の平均年齢76.2歳
- 本レポートの位置づけ:当法人が2026年6月に公表した全国推計「介護施設入所時に家族による身元保証が困難な要介護・要支援高齢者数の推計(全国約52.1万人)」の、現場側からの実態報告にあたります
1. 調査の背景と目的
当法人は2026年6月、公的統計をもとに「介護施設への入所時に、家族による身元保証が困難な要介護・要支援高齢者」が全国で約52.1万人にのぼるとの推計を公表しました。
一方で、この「52万人」がどのような人々なのか——どの年齢で、どのような家族構成で、何をきっかけに支援を求めるのか——というミクロな実像については、公的統計からは読み取ることができません。
そこで本レポートでは、実際に当法人の身元保証・生活支援サービスを利用している会員57名の記録を集計し、身元保証を必要とする人々の具体的な姿を明らかにすることを試みました。マクロな推計値と、支援現場の実態とを接続することが本レポートの目的です。
2. 調査概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査対象 | 一般社団法人あんしんの輪の会員のうち、本調査の主要項目(性別・子の有無・配偶者の状況・相談のきっかけ・契約前の緊急連絡先の有無)がすべて確認できた57名 |
| 集計方法 | 会員管理システムの登録情報および担当スタッフによる記録・把握内容をもとに、所定の項目に沿って集計 |
| 集計時点 | 2026年7月 |
| 集計項目 | 年齢、性別、子の有無、子に頼れない理由、配偶者の状況、相談のきっかけ、契約前の緊急連絡先の有無 |
| 留意点 | 本人への調査票調査ではなく、支援記録に基づく集計です。主要項目に欠落のある会員は分析対象から除外しており、本レポートのすべての比率は同一の57名を母数としています |
※本調査は年次で継続し、毎年更新する予定です。本レポートはその第1回にあたります。
3. 集計結果一覧
本調査の全項目を以下に示します(すべてn=57、割合は小数第2位を四捨五入)。
基本属性
| 項目 | 区分 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 性別 | 男性 | 30名 | 52.6% |
| 女性 | 27名 | 47.4% | |
| 契約時の年齢 | 50歳代以下 | 2名 | 3.5% |
| 60歳代 | 11名 | 19.3% | |
| 70歳代 | 24名 | 42.1% | |
| 80歳代 | 18名 | 31.6% | |
| 90歳代以上 | 2名 | 3.5% | |
| 平均76.2歳/中央値76歳/最年少58歳・最高齢94歳 | |||
| 男性平均74.9歳/女性平均77.7歳 |
家族の状況
| 項目 | 区分 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 配偶者 | 未婚(結婚歴なし) | 29名 | 50.9% |
| 死別・離別 | 21名 | 36.8% | |
| 配偶者あり | 7名 | 12.3% | |
| 子 | 子なし | 40名 | 70.2% |
| 子あり | 17名 | 29.8% | |
| 配偶者・子の両方なし | 該当 | 35名 | 61.4% |
支援を必要とする状況
| 項目 | 区分 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 契約前の緊急連絡先 | いなかった | 38名 | 66.7% |
| いた | 19名 | 33.3% | |
| 相談のきっかけ | 将来への不安 | 23名 | 40.4% |
| 民間事業者からの紹介 | 11名 | 19.3% | |
| 医療・介護・行政機関からの紹介 | 7名 | 12.3% | |
| 施設入居 | 5名 | 8.8% | |
| 入院・手術 | 4名 | 7.0% | |
| 賃貸契約 | 3名 | 5.3% | |
| 家族の勧め | 3名 | 5.3% | |
| 就職に伴う保証人 | 1名 | 1.8% |
子がいる17名の内訳
| 項目 | 区分 | 人数 |
|---|---|---|
| 子に頼れない理由 | 子に負担をかけたくない | 6名 |
| 関係不和 | 5名 | |
| 疎遠・音信不通 | 2名 | |
| 遠方・海外 | 2名 | |
| 子が高齢・病気 | 1名 | |
| その他 | 1名 | |
| 契約前の緊急連絡先 | いた | 13名 |
| いなかった | 4名 |
4. 主要な結果
4-1.【主要結果】契約前、緊急連絡先に書ける人が「いなかった」

入院や施設入居の申込書には、必ず「緊急連絡先」の記入欄があります。当法人と契約する前の時点で、この欄に書ける人が一人もいなかった利用者は、57名中38名(66.7%)にのぼりました。
3人に2人が、緊急時に連絡できる相手を持たないまま生活していたことになります。身元保証人(金銭的な連帯保証を伴う)よりもはるかにハードルの低い「緊急連絡先」の段階で、すでにこれだけの空白が生じていました。
4-2. 利用者の未婚率は、65歳以上人口全体の約8倍
利用者の未婚(結婚歴なし)は50.9%を占めました。男女別では男性60.0%(18/30名)、女性40.7%(11/27名)です。
これを全国の水準と比較すると、次のようになります。

| 区分 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 当法人の利用者 | 60.0% | 40.7% |
| 65歳以上の単独世帯(一人暮らし) | 33.7% | 11.9% |
| 65歳以上人口全体 | 7.9% | 4.8% |
- 65歳以上人口全体と比べると、男性で約7.6倍、女性で約8.4倍
- 一人暮らし高齢者と比べてもなお、男性で約1.8倍、女性で約3.4倍
「65歳以上人口全体」の未婚率は、国立社会保障・人口問題研究所が示す65歳以上の未婚者数(2020年、男性124万人・女性99万人)を、総務省統計局による同年の65歳以上人口(男性1,573万人・女性2,044万人)で除して算出した参考値です。単独世帯の数値は同研究所「日本の世帯数の将来推計(令和6年推計)」によります。
単に一人暮らしであるという要因を除いてもなお未婚に強く偏っていることは、身元保証の課題が「高齢化」よりもむしろ「未婚化」と強く結びついていることを示唆しています。
4-3. 配偶者も子もいない人が6割
配偶者(未婚・死別・離別)と子の両方がいない利用者は35名(61.4%)でした。子がいない利用者だけをみると70.2%を占めます。
4-4. 子がいても、4人に1人は緊急連絡先がいない
一方で、子がいる利用者も29.8%(17名)存在します。注目すべきは、子がいる17名のうち4名(23.5%)が、契約前に緊急連絡先に書ける人がいなかったという点です。

| 緊急連絡先「いた」 | 緊急連絡先「いなかった」 | |
|---|---|---|
| 子あり(17名) | 13名 | 4名(23.5%) |
| 子なし(40名) | 6名 | 34名(85.0%) |
子の存在は、必ずしも緊急時に頼れる相手の存在を意味しません。
子がいる17名が外部の身元保証を必要とした理由は、「子に負担をかけたくない」が6名で最多、次いで「関係不和」が5名でした。家族関係が壊れているケースと、関係は良好でありながら子に頼らないことを選択するケースが、ほぼ同数存在することになります。「身寄りがない」という言葉が指し示す状況は、必ずしも家族の断絶だけではありません。
4-5. 契約時の平均年齢は70歳代後半
契約時点の年齢は平均76.2歳(中央値76歳、最年少58歳・最高齢94歳)で、70歳代が42.1%、80歳代以上が35.1%を占めました。元気なうちに備えるというよりも、心身の変化や具体的な必要に迫られてから相談に至る実態がうかがえます。
4-6. 相談のきっかけ——「将来への不安」が4割、紹介経由は民間が公的を上回る

最も多いのは「将来への不安」(40.4%)でした。特定の出来事ではなく、漠然とした不安を抱えて自ら相談に至る層が最大です。
第三者からの紹介は合計18名(31.6%)で、その内訳は施設紹介会社などの民間事業者が11名、地域包括支援センター・病院・行政などの医療・介護・行政機関が7名でした。公的な相談窓口よりも、商業的な紹介ルートのほうが多くなっています。
5. 支援現場の事例
以下は、当法人が実際に支援している事例です。個人の特定を避けるため、居住地域・職業・病名・具体的な経緯などは記載せず、複数の事例に共通してみられる構造のみを記述しています。
事例1|複数の子を順に頼ったが、いずれも続かなかった(60歳代・男性)
施設入所時の身元保証人は、当初は遠方に住む子が引き受けていた。しかし程なく連絡が取れなくなり、書類を送っても返信のない状態になった。次に別の子へ引き継いだが、施設側との間で行き違いが生じて離脱。さらに別の子が対応したものの「手に余る」として、最終的に当法人へ相談が寄せられた。入所当初は、家族関係に問題があるようには見えていなかったケースである。
事例2|就職時の保証人すら頼めなかった(50歳代・男性)
きょうだいがいるが長く連絡を取っておらず、親族とは「一切関わりたくない」という意向を持っていた。就職に際して求められる身元保証を依頼できる相手がおらず、当法人が対応することとなった。身元保証の課題が高齢者だけのものではないことを示す事例である。
事例3|親を看取って初めて、自分の番に気づいた(70歳代・女性)
親を施設に預けて介護していたが、本人も体調に不安を抱えていた。親を見送った後、「今度は自分のことをやってくれる人が誰もいない」ことに気づいて相談に至った。当初は「本当はこういうところに頼りたくないが、仕方なく」との心境で一度保留となったが、数年後に本人から再度連絡があり契約。現在は財産の管理や任意後見、遺言へと支援が広がっている。
事例4・5|夫婦二人だけで支え合う限界(70歳代・男性/70歳代・女性)
介護関係機関からの紹介で相談を受けた高齢のご夫婦。妻の認知症が進行し、介護する夫が疲弊していた。夫自身も体調を崩しており、夫婦をまとめて支援できる先を探していた。夫に万一のことがあった場合、認知症が進んだ妻では各種の手続きができないことを懸念しており、現在は任意後見の準備を進めている。
事例6|親族はいるが、条件付きでしか動かない(60歳代・男性)
持病の治療に加えて認知症の症状が現れ、介護施設への入所が必要となった。親族が一人いるものの、一定の条件が満たされる場合に限って役割を引き受けるという姿勢であった。最終的に施設の身元保証人は親族が引き受けたが、通院の付き添いなど日常的な支援は負担が大きいとして、当法人への依頼が続いている。親族がいることと、必要な支援が得られることは同義ではない。
事例7|子の転居により支援が断絶(70歳代・女性)
子と二人で暮らしていたが、子が遠方へ転居することになり、これまでのような世話ができなくなった。そのため必要な支援の一切を当法人に委託して契約に至った。現在は子と連絡を取り合いながら、当法人が行政手続きや関係機関との対応を担っている。子がいても、物理的な距離によって支援が断絶する例である。
事例8|人を支える仕事をしてきた末に(60歳代・女性)
対人支援の仕事に長く従事してきた。両親を相次いで亡くし、結婚歴はあるが離別している。自身が高齢期を迎え、身元を保証してくれる人が誰もいない状況となって当法人に相談した。
事例9|きょうだいはいるが、全員と疎遠(70歳代・男性)
複数のきょうだいがいる家庭で育ち、長く会社勤めをしてきた。健康上の大きな問題はないが、きょうだいとはいずれも疎遠で、現在頼れる親族はいない。
事例10|判断能力があるうちに、間に合うか(80歳代・男性)
高齢者向けの住まいに入居中。持病はないが認知症の症状が現れており、今後は成年後見制度の手続きと遺言書の作成を進める必要がある段階にある。遠方に親族が一人いるが、長期間交流がない。契約行為には本人の判断能力が必要であり、時間との勝負となる。
6. 考察
①「身寄りがない」の実像は、家族の断絶よりも「未婚化」である
本調査で最も明確に表れたのは、利用者の未婚率が65歳以上人口全体の約8倍にのぼるという事実です。「身寄りのない高齢者」という言葉からは、家族と疎遠になった人の姿が想像されがちですが、実際にはそもそも配偶者も子も持たなかった人が中心を占めています。配偶者も子もいない人は61.4%でした。
国立社会保障・人口問題研究所は、65歳以上の未婚者が2020年の男性124万人・女性99万人から、2050年には男性380万人・女性317万人へと約3倍に増加すると推計しています。本調査が示す利用者像は、今後の日本社会において多数派へと近づいていく層であるといえます。
② 家族の有無と、支援の有無は別問題である
一方で、子がいる利用者も29.8%存在し、そのうち23.5%は緊急連絡先に書ける人がいませんでした。子に頼れない理由の最多は「子に負担をかけたくない」で、次いで「関係不和」がほぼ同数です。
後者は家族関係の断絶ですが、前者は関係が良好であるにもかかわらず、本人が子に頼らないことを選択したケースです。家族の存在を前提とした制度は、この前者を捕捉できません。「家族がいるかどうか」ではなく「実際に支援を受けられるかどうか」を基準とした仕組みが求められます。
③ 相談は「困ってから」寄せられる
契約時の平均年齢は76.2歳、80歳代以上が35.1%を占めています。身元保証や死後事務の契約には本人の判断能力が必要であるにもかかわらず、実際の相談は心身の変化が生じてから寄せられる傾向にあります。
事例10のように、認知症の進行と手続きが競争関係になるケースは現場では珍しくありません。判断能力があるうちに備えるという啓発が、依然として届いていない実態を示しています。
④ 公的な窓口が受け皿にたどり着けていない可能性
紹介経由の相談18件のうち、民間事業者からの紹介が11件と、医療・介護・行政機関からの7件を上回りました。地域包括支援センターをはじめとする公的な相談窓口は、身寄りのない高齢者と最初に接点を持つ機関であるはずですが、そこから身元保証の受け皿へとつながる経路は、商業的な紹介ルートより細いことになります。
身元保証の担い手に関する公的な認証・紹介の枠組みが未整備であることが、この非対称性の背景にあると考えられます。
⑤ 全国52万人の課題と、現場の実感
当法人の推計では、介護施設入所時に家族による身元保証が困難な要介護・要支援高齢者は全国で約52.1万人にのぼります。本調査は、その一部が実際に支援につながった際、どのような姿をしているのかを示すものです。
57名という限られた規模ではありますが、「緊急連絡先に書ける人が一人もいない」という状態が3人に2人という現場の実感は、統計上の数値が示す以上の切迫感を伴っています。
7. 本調査における前提条件と限界
本調査の結果を解釈・引用するにあたっては、以下の点に留意が必要です。
1. 当法人の利用者に限定されたデータであること
本調査の対象は、当法人のサービスを利用している会員57名です。身元保証サービスを必要とし、かつ実際に契約に至った層であるため、全国の高齢者を代表するものではありません。未婚率が全国平均を大きく上回るのも、そもそもそうした層が当法人を必要としているためであり、因果関係を示すものではありません。
2. 調査票調査ではなく、支援記録に基づく集計であること
本人に対して統一様式の質問を行ったものではなく、会員管理システムの登録情報および担当スタッフが把握している内容をもとに集計しています。「子に頼れない理由」など、本人の主観に関わる項目については、スタッフの理解を通じた記録であることに留意が必要です。
3. 主要項目に欠落のある会員を除外していること
本調査では、主要5項目すべてが確認できた会員のみを分析対象としています。確認できなかった項目がある会員は集計から除外しているため、当法人の会員全体の傾向とは差異が生じる可能性があります。
4. 規模が限られていること
n=57という規模は統計的な代表性を主張できるものではなく、比率の数値には相応の幅があると考えるべきです。本調査は年次で継続する予定であり、今後データを蓄積することで精度の向上を図ります。
5. 比較に用いた全国値の算出方法
65歳以上人口全体の未婚率は、国立社会保障・人口問題研究所が示す65歳以上の未婚者数(2020年)を、総務省統計局による同年の65歳以上人口で除して当法人が算出した参考値です。国勢調査の配偶関係集計における公表値とは、集計方法により差異が生じる可能性があります。
6. 事例の記載について
第5章の事例は、個人が特定されることを避けるため、居住地域・職業・病名・相談に至った具体的な経緯などを記載せず、内容を抽象化して記述しています。事例の本質的な構造は変えていませんが、細部は個々の実際の経過と一致しません。
8. 本レポートの引用・転載について
本レポートのデータおよび図表は、出典を明記のうえ自由にご利用いただけます。
- 出典表記:一般社団法人あんしんの輪『第1回 身元保証 現場レポート』(2026年◯月)
- リンク設置:Web媒体で引用される場合は、本ページへのリンクを設置してください
取材・データ提供について
本調査に関する取材、担当者によるコメントの提供、個別データのご提供に対応しています。下記までお問い合わせください。
一般社団法人あんしんの輪 TEL:048-999-6414(平日9:00〜17:30) https://www.ansinnowa.net/
