
手術が決まったとき、病院から「手術同意書に署名してください」と言われて、不安になったり戸惑ったりする方は少なくありません。説明を受けても専門用語が多くて理解しきれなかったり、リスクの話を聞いて迷いが強くなったり、家族と意見が合わずに困ってしまうこともあります。
この記事では、手術同意とは何か、どんな説明が必要で、何を確認してから署名すればよいのかを、できるだけ分かりやすく整理します。未成年や高齢者、緊急時など、同意の進め方が変わりやすい場面も含めて、実務で役立つポイントに絞って解説します。
まずは結論を短くまとめると、手術同意で押さえるべき対応策は次の3つです。
- 手術の目的・方法・代替治療と、起こり得るリスクや対応を、分かる言葉で具体的に確認する
- 同意書の範囲(麻酔、輸血、追加処置など)を整理し、不明点が残るうちは署名せず質問して解消する
- 本人の意思を中心に、家族の同席やセカンドオピニオン、支援制度の活用で納得できる判断環境を整える
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手術同意とは何かを最初に押さえる
手術同意とは、医師から手術に関する説明を受けたうえで、患者本人が手術を受けることに同意することです。医療は患者の身体に直接影響を与えるため、患者の意思を尊重し、納得して選べる状態を整えることが大切になります。
同意は「サインをする行為」だけを指すものではありません。理解できる説明があり、質問でき、無理に急かされず、本人の意思で決められる状況がそろってはじめて、同意としての意味が成立します。
手術同意とインフォームドコンセントの違い
インフォームドコンセントは、必要な情報提供と理解、意思決定の支援を含む一連のプロセスです。手術同意は、そのプロセスを経て「受ける・受けない」を決めた結果としての合意と考えると整理しやすくなります。
- インフォームドコンセント:説明、理解、検討、質問、意思決定までの流れ
- 手術同意:その結果としての「手術を受ける」という意思表示
同意が必要になる場面と不要になり得る場面
原則として、予定手術や緊急性が高くない手術では、本人の同意が必要です。いっぽうで、本人が意思表示できず命に関わる緊急状況では、救命を優先して必要最小限の医療行為が行われることがあります。
ただし「緊急だから何でもよい」わけではありません。緊急時でも、可能な限り家族等への連絡や情報提供が試みられ、本人の既往歴、事前の希望、宗教上の制約などが把握できる場合は配慮されます。
同意の対象になる医療行為の範囲
手術そのものだけでなく、手術に付随する医療行為が同意の対象になることがあります。たとえば麻酔、輸血、追加処置、検体の取り扱い、術中の方針変更などです。医療機関によって説明書・同意書が分かれている場合もあり、どこまでが今回の同意に含まれるのかを確認しておくと安心です。
同意の前提になる自己決定権と説明義務
患者には、自分の身体に関する治療を選ぶ権利があります。そのため医療側には、患者が判断できるだけの説明を行うことが求められます。説明は専門用語の羅列ではなく、患者の理解度に合わせて分かる言葉に置き換えることが重要です。
手術同意で説明されるべき内容
同意の質は、説明の質で決まります。手術の説明は医療機関や診療科によって形式が異なりますが、一般に確認しておきたい要素は共通しています。
病名と現状の説明
いま体の中で何が起きているのか、病状の進行度、放置した場合の見通しなど、手術の必要性を判断する土台となる情報です。画像検査や血液検査など、根拠となる所見も必要に応じて説明されます。
手術の目的と期待できる効果
痛みの改善、再発予防、機能回復、生命予後の改善など、手術で目指すゴールを具体的に把握します。効果が「必ず得られる」のか「見込まれる」のか、期待値の幅も確認しておくと判断しやすくなります。
手術の方法と手順の概要
開腹・開胸・内視鏡・カテーテルなどのアプローチ、切開の位置、使用する器具、手術時間の目安などが説明されます。聞き慣れない方式が出てきたら、図を使ってもらう、言い換えてもらうなどして理解を深めることができます。
麻酔の種類とリスク
全身麻酔、脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔、局所麻酔など、麻酔の種類によってリスクや術後の過ごし方が変わります。麻酔で起こり得る合併症、既往歴や服薬との関係、術前の絶食・絶飲の理由も確認ポイントです。
合併症と偶発症
出血、感染、血栓、神経損傷、臓器損傷など、手術に伴う代表的なリスクが説明されます。重要なのは「頻度」と「起きた場合の影響」です。たとえば頻度は低くても重篤になり得るものは、理解しておく必要があります。
後遺症の可能性と生活への影響
感覚の変化、可動域の制限、痛みの残存、嚥下や発声への影響など、術後の生活に関わる点は特に具体的に確認したいところです。仕事復帰や運転、入浴、運動再開の目安も生活設計に直結します。
輸血の必要性と選択肢
出血リスクがある手術では、輸血の可能性が説明されます。どの程度の出血で輸血が必要になるのか、自己血貯血の選択肢があるのか、輸血に伴う感染症リスクや副反応への対応も確認すると安心です。
代替治療と経過観察の選択肢
手術以外の治療として、薬物療法、リハビリ、放射線治療、内視鏡的治療、生活指導などが選択肢になり得ます。手術を急ぐ必要がどの程度あるのか、様子を見る場合のリスクとフォロー方法も聞いておくと比較ができます。
手術をしない場合に起こり得ること
症状が悪化する可能性、緊急手術になるリスク、回復が難しくなる可能性など、手術を選ばない選択肢の見通しも大切な情報です。怖がらせるためではなく、判断材料として受け止めることがポイントです。
入院期間と回復の見通し
入院日数の目安、術後の痛み管理、食事再開や歩行開始のタイミング、退院後の通院頻度などが説明されます。家族の支援が必要な期間、介護サービスの利用が必要かどうかも早めに見通しを立てられます。
費用の目安と追加費用が発生する場面
医療費は保険適用の範囲でも自己負担が生じ、差額ベッド代や文書料などが加わることがあります。高額療養費制度の対象になる可能性、想定外の処置や入院延長が起きた場合の費用感も、可能な範囲で確認しておくと不安が減ります。
同意が有効になる条件
同意は「形式」だけではなく「中身」が重要です。納得して選んだと言えるための条件を押さえておくと、説明を受ける姿勢が整います。
同意能力とは何か
同意能力は、説明内容を理解し、選択肢を比べ、自分の価値観に沿って決め、その意思を表明できる力を指します。年齢だけで決まるものではなく、病状や認知機能、精神状態、薬の影響などによって変化します。
理解に必要な情報量と分かりやすさ
必要な情報が不足していれば、同意は形だけになりやすくなります。反対に情報が多すぎて理解が追いつかない場合もあります。分からない言葉が出たら、その場で止めて言い換えを求めることは自然な行動です。
任意性と押しつけがない状態
同意は強制されるものではありません。断ったら不利益があるように感じる状況や、恐怖心だけで追い込まれる状況では、冷静な判断が難しくなります。必要なら一度持ち帰って検討する、家族と相談する、別の医師の意見を聞くことも選択肢です。
質問できる環境と熟慮の時間
短時間で多くの説明が行われることもありますが、質問する権利は患者側にあります。メモを見ながら質問する、同席者にメモを取ってもらう、説明資料に書き込みをするなど、理解を助ける工夫が役立ちます。
同意の撤回と変更はできるのか
一般に、手術前であれば同意を撤回したり、方針を変更したりすることはあり得ます。ただし、麻酔導入直前など医療安全上の制約が出る場面もあるため、迷いが出たらできるだけ早く申し出ることが大切です。
手術同意書の基本
同意書は、説明と合意の内容を文書として残すためのものです。サインをする前に、文書が何を示し、何を示していないのかを理解しておくと安心です。
同意書が果たす役割
- どの手術・医療行為に同意したかを明確にする
- 説明を受けた日時や説明者、患者の意思表示を記録する
- チーム医療の中で情報を共有し、医療安全を支える
同意書はトラブル回避だけのためではなく、医療の質と安全を支えるための文書でもあります。
同意書に書かれている代表的な項目
- 手術名、予定日、術式
- 麻酔方法
- 想定される合併症、偶発症
- 輸血や追加処置の可能性
- 患者本人の署名、日付
- 説明医師の署名、日付
署名する人と署名できる人
原則は本人が署名します。本人が署名できない事情がある場合、家族が代わりに署名する運用が行われることもありますが、どのような立場の人が署名するのか、本人の意思はどう確認したのかを丁寧に整理することが望まれます。
代筆と代理署名の扱い
手の震えや視力低下などで署名が難しい場合、代筆が検討されることがあります。代筆のときは、本人が内容を理解し同意していること、誰が代筆したか、どのように確認したかが重要になります。医療機関の説明に沿って、疑問があればその場で確認します。
日付と説明者の記載の意味
日付は「いつ説明が行われ、いつ同意したか」を示します。説明者の記載は、誰が責任を持って説明したかの記録になります。説明が複数回に分かれた場合、主な説明を担当した医師やチームとしての体制が示されることがあります。
説明文書と同意書の違い
説明文書は、手術の内容やリスク、術後の生活などを理解するための資料です。同意書は、その説明を踏まえて同意したことを示す文書です。説明文書に書かれていないことが気になる場合は、口頭説明だけで済ませず、可能なら追記や補足資料の提示を求めると理解が深まります。
同意書を渡されたら確認したいチェックポイント
- 手術名や部位、左右などが自分の理解と一致しているか
- 麻酔方法が説明どおりか
- 合併症の説明が自分の理解とつながっているか
- 追加処置や輸血の扱いがどうなっているか
- 質問していない不明点が残っていないか
手術前説明の受け方をうまくするコツ
同意に至るまでの時間は、情報を集めて不安を減らすチャンスでもあります。受け身になりすぎず、分かる形で整理することがポイントです。
事前に準備しておく質問リスト
診察室では緊張して忘れやすいため、短い質問でも箇条書きにして持参すると役立ちます。
- 手術を受ける最大の目的は何か
- 成功の目安はどのように評価するのか
- 合併症が起きた場合、どう対応するのか
- 退院後に注意する症状は何か
- 仕事や家事はいつ頃から再開できるか
リスクの確率の聞き方
リスクは「ある・ない」ではなく、頻度と重さの組み合わせで理解すると整理しやすくなります。
- この手術でよくある合併症は何か
- まれだが重い合併症は何か
- 自分の年齢や持病でリスクは増えるのか
医師の説明が難しいときの伝え方
理解できないことは恥ではありません。たとえば次のように伝えると、説明の仕方を調整してもらいやすくなります。
- 専門用語が多くて追いつかないので、もう少し簡単に言い換えてほしい
- 図や写真で示してほしい
- 一番大事な点を先に教えてほしい
家族が同席したほうがよいケース
本人が緊張しやすい場合、手術後の生活支援が必要な場合、判断が難しい選択肢がある場合は、家族や支援者が同席すると情報整理に役立ちます。同席者がいることで、聞き漏らしや認識のズレも減らせます。
セカンドオピニオンの活用
別の医師の意見を聞くことは、医師を疑う行為ではなく、納得して決めるための手段です。手術の必要性、術式の選択、タイミング、代替治療の可能性など、比較によって理解が深まることがあります。
同意を急がされると感じたときの対応
予定手術であれば、検討の時間を確保できることが多いです。急ぐ理由がある場合は、その理由を具体的に確認します。たとえば「どのくらい待てるのか」「待つ場合のリスクは何か」を聞くと、自分に必要なスピード感が見えてきます。
説明内容のメモと記録の残し方
説明で重要だと思った点をメモに残し、家族と共有できる形にしておくと、後で不安になったときにも立て直しやすくなります。疑問点は丸印を付けて次回の診察で確認し、理解が更新されたらメモも更新します。
同意に関するよくある誤解
同意書にサインしたら必ず手術しないといけないのか
サインは最終決定に近い行為ですが、不安や疑問が解消していない状態で無理に進める必要はありません。迷いがあるなら、医師にそのまま伝えて説明を追加してもらう、再検討することが現実的です。
説明を受けていないことまで同意した扱いになるのか
同意は、理解できる説明があって初めて意味を持ちます。書面に書かれているが説明されていない、口頭で言われたが資料にない、といったズレがあるときは、その場で確認し、必要なら補足説明を求めることが重要です。
合併症が起きたら必ず医療ミスなのか
合併症は、注意を尽くしても一定の確率で起こり得るものがあります。重要なのは、どのようなリスクがあると説明されていたか、予防策や術後の対応が適切に行われているかという点です。
同意しないと治療を断られるのか
手術を受けない選択をした場合でも、他の治療や経過観察の方針が検討されることがあります。治療の選択肢やフォロー体制を具体的に確認することで、現実的な判断がしやすくなります。
家族が反対したら手術はできないのか
原則として、本人が同意能力を持ち、意思が明確であれば本人の意思が尊重されます。家族の心配は自然なことですが、何に不安があるのかを言語化し、医師に共有して説明を補強してもらうことで、対立ではなく納得に近づける場合があります。
同意のパターン別に理解する
手術同意は「本人が説明を受けて同意する」が基本ですが、年齢や病状、意思表示の可否によって進め方が変わります。どのパターンでも共通するのは、本人の意思をできるだけ丁寧に確認し、理解できる形で説明することです。
本人同意が基本となるケース
成人で意思表示ができる場合は、本人同意が中心です。家族が同席していても、最終的な意思は本人にあります。医師の説明の途中で不安が強くなる場合は、いったん説明を止めてもらい、分からない点をその場で解消することができます。
家族の同意が関わるケース
本人が意思表示できない、理解が十分に難しい、緊急性が高いなどの状況では、家族が意思決定に関わることがあります。ただし「家族の同意があるからよい」ではなく、本人の価値観やこれまでの希望を家族が代弁し、本人の利益を最大化する観点が重視されます。
本人の意思が最優先になる場面
本人が同意能力を持ち、意思が明確であれば、家族の意向より本人の意思が優先されるのが原則です。家族が強く反対している場合でも、何を心配しているのかを整理し、医師から追加の説明を受けることで、本人の意思を尊重しつつ周囲の不安を減らせることがあります。
家族の意向と本人の意向が食い違う場面
食い違いが起きたときは、まず論点を分けて考えると整理しやすくなります。
- 手術の目的や必要性に対する理解の差
- 合併症や後遺症への不安
- 術後の介護や生活支援の負担
- 費用や仕事への影響
医師に対して「家族と本人で理解がずれているので、同じ説明をもう一度してほしい」と伝えると、説明の焦点が合いやすくなります。看護師、医療ソーシャルワーカーなどに同席してもらえる場合もあります。
複数の治療案から選ぶ同意
同じ病気でも、術式や治療方針が複数あることがあります。たとえば侵襲が小さい代わりに再治療の可能性が高い方法、侵襲は大きいが長期的な効果が見込みやすい方法などです。比較するときは、次の視点が役立ちます。
- 目的が同じか、目的が違うか
- 回復までの期間と生活への影響
- 再発・再治療の可能性
- 合併症の種類と重さ
段階的に同意する手術と追加処置
手術中の状況により、予定していなかった追加処置が必要になることがあります。代表例は、出血の増加に伴う輸血、想定外の病変の追加切除、器具の変更、手術範囲の拡大などです。追加処置の同意がどう扱われるのか、事前に確認しておくと安心です。
未成年の手術同意
未成年では、本人の理解力と判断力、手術の内容やリスク、緊急性などを踏まえて同意の形が調整されます。
未成年でも同意能力が認められる考え方
未成年であっても、年齢や成熟度により、自分の治療について理解し意思表示できる場合があります。本人の理解を確認しながら説明が行われ、本人の意向が丁寧に扱われます。
親権者の同意が求められやすい理由
未成年は法律上の取り扱いから、親権者が医療に関する手続きに関わることが一般的です。特に侵襲が大きい手術や、長期的な後遺症の可能性がある治療では、親権者への説明と同意が求められやすくなります。
本人への説明と親への説明をどう分けるか
本人には、恐怖心をあおらず、理解できる言葉で、いま必要な情報を中心に伝えることが大切です。親には、リスクや術後経過、生活支援、費用、学校生活への影響まで含めて具体的に説明されることが多くなります。本人が聞きたくない内容がある場合は、医療者に伝えて説明の場を分けてもらう工夫も考えられます。
緊急手術での対応
緊急性が高く、親権者と連絡がつくまで待てない状況では、救命や重大な障害の回避を優先して治療が進むことがあります。連絡が取れ次第、治療内容や経過の説明が行われ、同意の整理がなされます。
高齢者や認知機能が低下している場合の手術同意
高齢者では、身体的なリスクだけでなく、認知機能、せん妄の起きやすさ、術後の生活の変化も含めて考える必要があります。
同意能力の評価の基本
同意能力は、診断名だけで決まるものではありません。説明内容を理解できるか、治療の目的とリスクを踏まえて選べるか、意思が一貫しているかなどが確認されます。疲労や痛み、薬の影響で一時的に理解が落ちることもあるため、説明のタイミングを調整することがあります。
日によって判断が変わるときの工夫
午前中の方が頭がすっきりしている、食後は眠くなるなど、本人の状態には波があります。説明は状態のよい時間帯に行い、短い説明を複数回に分ける、紙に要点をまとめる、家族に同席してもらうなどが役立ちます。
家族がいない場合に起こる問題
一人暮らしで緊急連絡先がない場合、術後の退院調整や支援体制の確保が課題になります。医療機関では、地域連携室や医療ソーシャルワーカーが関わり、介護保険サービス、訪問看護、施設利用などの選択肢が検討されることがあります。
成年後見制度と医療同意の関係
成年後見制度は財産管理や契約行為の支援を目的とする制度で、医療同意の扱いは状況によって複雑になります。医療機関の運用や事案の性質により対応が異なるため、疑問があれば医療機関の相談窓口で確認し、必要に応じて専門職に相談することが重要です。
意識がない人や緊急時の手術同意
交通事故や急病で意識がない場合など、本人の意思確認ができない状況では、救命と本人の尊厳の両立が課題になります。
緊急避難的に治療が行われる考え方
命に関わり、同意を得る時間がないと判断される場合、治療が開始されることがあります。治療は必要最小限から始まり、本人の状態が安定し次第、家族への説明や方針の再確認が行われます。
事前指示書とリビングウィル
心肺蘇生や延命治療に関する希望が事前に示されている場合、可能な範囲で尊重されます。書面がなくても、本人が普段から話していた希望を家族が医療者に伝えることが、意思の推定に役立つことがあります。
身元不明や連絡先不明のとき
身元が確認できない場合でも、救命の必要があれば治療が進むことがあります。本人確認が進んだ段階で、治療内容の説明や意思確認があらためて行われます。
精神疾患や知的障害がある場合の手術同意
精神疾患や知的障害がある場合でも、同意能力があるかどうかは個別に判断されます。大切なのは、本人が理解できる形に調整し、意思を表明できる環境を整えることです。
同意能力の判断で重視される点
- 説明を理解し、自分の言葉で言い返せるか
- 選択肢の違いをある程度比較できるか
- 一時的な感情や症状に左右されすぎていないか
- 意思が継続しているか
合理的配慮と説明の工夫
難しい言葉を避け、短い文章で区切る、図を使う、要点を繰り返すなどの工夫が有効です。説明の場に支援者が同席すると、本人の理解を助け、本人の希望を医療者に伝えやすくなります。
言語や文化の違いがある場合の手術同意
日本語が十分に分からない場合や、文化的背景により医療への期待が異なる場合、説明の伝わり方に差が生じます。誤解を減らすための工夫が重要です。
通訳を入れるべき場面
手術や麻酔のリスク説明、同意書の確認は、正確さが強く求められます。家族による通訳は便利な反面、医療用語の誤訳や情報の取捨選択が起きることもあるため、可能であれば医療通訳の利用が望まれます。
やさしい日本語での説明
短い文で話す、結論から話す、難しい漢字を避けるなど、やさしい日本語は理解の助けになります。本人がどの程度理解できているか、言い換えで確認することも大切です。
宗教上の制約がある治療と同意
輸血を避けたい、特定の成分を含む薬剤を避けたいなど、宗教上の希望がある場合は、手術前に医療者へ伝える必要があります。代替策がどこまで可能か、緊急時の方針をどうするかを事前に共有しておくことで、当日の混乱を減らせます。
手術同意と個別テーマ
麻酔同意
麻酔は手術の安全性と快適性を左右します。麻酔科医から説明を受ける機会がある場合は、次の点を確認しておくと安心です。
- 麻酔の方法と、選択できる場合の違い
- 既往歴、アレルギー、服薬、喫煙の影響
- 術後の痛み対策と吐き気対策
- まれな重い合併症が起きた場合の対応
輸血同意
輸血は、必要時に命を守る一方で、副反応や感染症リスクなどが説明されます。自己血が選べるか、輸血を拒否する場合の代替策はあるか、緊急時の扱いはどうするかがポイントです。
病理検査や検体の扱いの同意
切除した組織を病理検査に出すことで、診断の確定や治療方針の決定に役立ちます。検体の保管期間や追加検査の可能性、研究利用が関わる場合の取り扱いは、説明文書で確認します。
写真撮影や記録の同意
手術記録として写真や動画が撮影されることがあります。医療の質の向上や記録の正確性に役立つ一方、利用範囲が気になる場合は、院内での取り扱い、匿名化、教育利用の有無などを確認できます。
研修医や学生の見学に関する同意
教育目的で見学が行われることがあります。見学に同意しないことによって診療の質が下がるべきではありません。不安がある場合は、見学の範囲や人数、本人が望まない場合の扱いを確認すると安心です。
臨床研究や治験が関わる場合の同意
研究や治験が関わる場合は、通常の手術同意とは別の説明と同意が行われます。利益と不利益、参加しない場合の治療、個人情報の取り扱い、途中でやめられるかなどを確認し、納得できる形で判断することが大切です。
同意しない選択とその後
手術に同意しないことは、珍しいことではありません。重要なのは、不同意の理由を整理し、その後の医療を途切れさせないことです。
不同意の伝え方
感情的にならず、理由を短く具体的に伝えると話が進みやすくなります。
- 合併症の説明が十分に理解できていない
- 別の治療法との比較ができていない
- 術後の生活がイメージできない
- 家族の支援体制が整っていない
別の病院での相談の進め方
納得のために他院の意見を聞く場合は、紹介状や検査データがあると比較しやすくなります。相談時は、手術の必要性、術式の選択、タイミング、入院と回復、再発率や合併症など、論点を絞って質問すると整理しやすくなります。
治療中断や転院の判断
転院を考える場合は、治療の空白期間をできるだけ作らないことが重要です。現在の病状のリスク、待機できる期間、急変時の対応、紹介先での受け入れ可否などを確認し、現実的な移行計画を立てます。
緩和ケアや保存的治療への切り替え
手術が唯一の選択肢ではないこともあります。症状を和らげる治療、生活の質を保つ支援、在宅医療など、目的に合わせた選択肢を医療者と共有することで、納得のいく方針を取りやすくなります。
トラブルを防ぐために知っておきたいポイント
手術同意で大切なのは、疑問点を残さないことと、情報を整理して共有できる状態にしておくことです。トラブルの多くは、認識のずれや説明の受け取り方の違いから起こります。
説明不足だと感じたときの確認方法
不足を感じた点を具体的にして、質問に変えると前に進みます。
- この手術を選ぶ決め手は何ですか
- 私の場合、合併症のリスクは平均より高いですか
- 追加処置が必要になった場合、どこまで同意したことになりますか
- 退院後に受診すべき症状を教えてください
合併症が起きたときに確認すること
合併症が起きた場合は、まず医療者の説明を落ち着いて整理することが重要です。
- いま起きていることは何で、原因として考えられるものは何か
- 当初説明されたリスクの範囲に含まれるのか
- 今後の治療方針と見通しはどうなるのか
- 追加の検査や治療の必要性はあるか
記録や書面の管理
説明文書、同意書の控え、退院時サマリー、薬の説明書などは、ひとまとめに保管すると役立ちます。日時ごとにメモを残しておくと、通院時の確認がしやすくなり、家族とも共有しやすくなります。
手術同意に関するチェックリスト
確認したい項目を、手術前の流れに沿って整理しておくと、焦りが減ります。
説明を受ける前の準備チェック
- 現在の症状、困っていることを整理した
- 持病、服薬、アレルギーをまとめた
- 聞きたいことを箇条書きにした
- 同席者が必要か検討した
説明当日の確認チェック
- 手術の目的と必要性を理解した
- 合併症の種類と対応を確認した
- 代替治療の有無と比較ができた
- 入院期間と回復の目安を把握した
- 退院後の生活上の注意点を聞いた
同意書に署名する前の最終チェック
- 手術名、部位、左右などに誤りがない
- 麻酔や輸血など付随する同意の範囲を理解した
- 追加処置の扱いを確認した
- 不明点が残っていない
帰宅後に家族と共有するチェック
- 手術日と入院の流れを共有した
- 術後に必要な支援を整理した
- 緊急連絡先や受診の目安を確認した
手術同意のよくある質問
同意書はいつ渡されることが多いか
外来で手術が決まった段階で渡されることもあれば、入院後に説明と一緒に渡されることもあります。受け取った時点で不明点があれば、署名の前に質問して解消することが重要です。
同意書を持ち帰って検討できるか
検討の時間を設けるために持ち帰りが可能な場合もあります。持ち帰りが難しい場合でも、説明文書を受け取って家族と共有できることがあります。検討したい事情があるときは、そのまま伝えることが現実的です。
説明は誰がしてくれるのか
主治医が説明することが多いですが、麻酔科医、看護師、薬剤師などが役割分担して説明することもあります。誰に何を聞けばよいか分からないときは、病棟スタッフに相談すると整理しやすくなります。
サインするのは本人以外でもよいのか
原則は本人ですが、本人が署名できない事情がある場合は、医療機関のルールに沿って家族が関与することがあります。本人の意思が確認できる場合は、その意思がどのように反映されるのかを確認しておくと安心です。
同意撤回はどの段階まで可能か
不安や疑問が残っている場合は、できるだけ早い段階で医師に伝えることが重要です。医療安全の観点から直前の変更が難しい場面もあるため、迷いが出たら先延ばしにせず相談します。
当日になって不安が強くなったらどうするか
遠慮せずに医療スタッフへ伝えることが大切です。不安の原因が痛み、麻酔、合併症、家族のことなど何にあるかで対応が変わります。短い説明の追加や、術後の見通しの再確認だけでも落ち着くことがあります。
説明内容を録音してよいか
医療機関の方針によって扱いが異なります。録音を希望する場合は、目的を伝えたうえで確認します。録音が難しい場合でも、要点を紙に書いてもらう、説明資料にメモを取るなどの方法があります。
オンライン説明や電子同意は増えているのか
医療機関によっては、説明資料をデジタルで提示したり、同意の手続きを電子化したりする動きがあります。具体的な運用は施設ごとに異なるため、入院前の案内や相談窓口で確認すると安心です。
まとめ
手術同意は、医師の説明を理解し、選択肢を比較し、自分の価値観に沿って決めるための大切な手続きです。本人同意が基本である一方、未成年、高齢者、認知機能の低下、緊急時など状況によって進め方が変わります。
納得して決めるためには、目的と効果、リスクと対応、代替治療、術後の生活まで具体的に把握し、不明点を質問して解消することが欠かせません。同意書はサインのための紙ではなく、説明と合意の内容を共有し、安全に治療を進めるための記録です。確認すべき点を整理し、焦らずに判断できる環境を整えることが、安心につながります。
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