
「おひとりさま」の高齢者が増えるなか、「自分が亡くなったとき、誰が死亡届を出してくれるのか」という不安を抱える方が増えています。従来、身元保証会社などの高齢者等終身サポート事業者は、原則として死亡届を提出できないとされてきました。しかし2025年10月、法務省から全国の市区町村の戸籍窓口に対して事務連絡が発出され、一定の要件を満たす事業者は戸籍法上の「家屋管理人」として死亡届を提出できる(かつ提出義務を負う)という解釈が示されました。
この記事では、そもそも死亡届は誰が出せるのかという基本から、国のガイドラインで「今後の課題」とされていた経緯、そして2025年の解釈拡大に至るまでの流れを、時系列で丁寧に解説します。
時系列まとめ
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2024年6月「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」策定 任意後見人等でない事業者は死亡届を提出できないと整理され、家屋管理人に含めるかは「今後の課題」として検討事項とされていました。
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2025年10月頃法務省が全国の市区町村戸籍窓口宛に事務連絡を発出 一定の要件を満たす事業者を「家屋管理人」として扱う解釈拡大が示され、死亡届の提出が認められるようになりました。
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2025年10月〜現在各自治体での運用開始 報道や業界団体の発信により解釈拡大が周知され、座間市など自治体の公式ページにも特例が順次明記・反映されています。
死亡届は「誰でも出せる」わけではない――戸籍法87条の基本
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡した場合は3か月以内)に提出しなければなりません(戸籍法第86条)。そして、届出ができる人は戸籍法第87条で厳格に定められています。
届出義務者(第87条第1項)
次の順序で届出をしなければならないとされています(順序にかかわらず届出は可能です)。
- 同居の親族
- その他の同居者
- 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人
届出資格者(第87条第2項)
義務はないものの届出ができる人として、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人、任意後見人、任意後見受任者が定められています。
このリストに含まれない人、たとえば友人・知人や、単に死後事務を委任されただけの事業者は、原則として死亡届の届出人になれません。死亡届が受理されなければ火葬許可証も発行されないため、葬儀や納骨を依頼していても、そもそも手続きに着手できないという深刻な問題が生じます。
なお、病院(私立病院)で亡くなった場合は病院長が、有料老人ホームなどの施設で亡くなった場合は施設長が、それぞれ「家屋管理人」として届出人になれるという運用は以前から行われてきました。問題となっていたのは、身寄りのない方が自宅で亡くなった場合です。
2024年6月:ガイドラインでは「今後の課題」だった
2024年(令和6年)6月、内閣官房・法務省など関係省庁が連名で「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を策定しました。身元保証・死後事務・日常生活支援などのサービスを提供する事業者の適正な事業運営を確保するための指針です。
このガイドラインの時点では、死亡届について次のように整理されていました。
- 事業者自身が任意後見人または任意後見受任者である場合には、戸籍法第87条第2項に基づき死亡届を提出できる
- 任意後見人等でない事業者は、自身で死亡届を提出することができない。相続人がいる場合には、死後事務委任契約に基づき、速やかに利用者の死亡を相続人に連絡することが重要とされた
(※以下の画像は該当ガイドラインPDFからの抜粋です)

そのうえで、巻末の「今後の課題」において、事業形態等を踏まえ、事業者が戸籍法第87条第1項第3号の家屋管理人等として死亡届の届出資格者に含まれるかを「検討する」と明記されました。
(※以下の画像は該当ガイドラインPDFからの抜粋です)

つまり2024年6月時点では、「原則出せない。ただし今後検討する」という位置づけだったのです。
2025年10月:法務省事務連絡による解釈拡大
ガイドラインで予告されていた検討が実を結んだのが、2025年10月頃です。法務省から全国の市区町村の戸籍担当窓口に対して事務連絡が発出され、一定の要件を満たす高齢者等終身サポート事業者を戸籍法第87条第1項第3号の「家屋管理人」として扱い、その死亡届を受理して差し支えないとする解釈が示されました。
この事務連絡は市区町村の窓口宛の行政文書であり、原文はウェブ上で一般公開されていません。しかし、以下の報道などからも、身寄りのない高齢者に対応するため、終身サポート事業者に死亡届の提出義務(および資格)が認められるようになったことが分かります。
参考ニュース記事: 死亡届の提出義務、終身サポート事業者にも 身寄りない高齢者に対応(朝日新聞デジタル / 2025年10月)
https://www.asahi.com/articles/ASTBY25L3TBYUTFL01JM.html
このように、ニュース報道や業界団体・専門家による解説、さらに後述する自治体の公式な案内からも、その解釈拡大の内容を明確に確認することができます。
認められるための主な要件
各種情報を総合すると、事業者が「家屋管理人」として死亡届を提出できるのは、次の条件を満たす場合です。
- 死亡地が本人の居所(家屋)であること
死亡診断書または死体検案書の「死亡したところ」に記載された場所が、本人の自宅等であること - 生前から居宅への立入りや見守り等の委託を受けていること
見守り・安否確認等により、緊急時に居宅へ立ち入ることを本人から委託されている(または遺言等で認められている)こと - 届出内容に特段の疑義がないこと
裏を返せば、死後事務委任契約を結んでいるだけでは足りないという点が重要です。生前からの見守り・安否確認を含む継続的なサポート契約があってはじめて、「家屋管理人」としての届出が可能になります。
実務上の注意点
解釈拡大によって事業者が死亡届を出せるようになった一方、いくつか押さえておくべき注意点があります。
第一に、届出は「権利」ではなく「義務」です。 戸籍法第87条第1項は届出義務者を定める規定であり、該当する事業者には届出義務が課されます。正当な理由なく届出を怠った場合には過料の制裁規定(戸籍法第137条)もあります。
第二に、届出人欄には事業者の代表者が個人として署名します。 法人名での届出はできず、代表者個人の氏名・生年月日・住所、さらに本籍地まで記載して届け出る必要があります。
第三に、死亡の事実を速やかに把握できる体制が前提となります。 見守り・安否確認の仕組みがなければ、そもそも死亡の事実をいち早く知ることができず、届出義務も、約束した葬儀・納骨等の死後事務も果たせないおそれがあります。
自治体の対応状況――座間市の例
事務連絡は全国の市区町村窓口宛に発出されたものなので、解釈自体は全国共通です。もっとも、ホームページ上の案内への反映状況は自治体によって差があります。
たとえば神奈川県座間市は、死亡届の案内ページにおいて、死亡地が死亡者の居所(家屋)である場合に限り、その居所への立入りを委託や遺言等で認められている「高齢者等終身サポート事業者」「訪問介護事業者」「死後事務委任契約の受任者」「遺言執行者」にも、特段の疑義がなければ家屋管理人として届出資格が認められる旨を明記しています。
(※以下の画像は該当ページからの抜粋です)

自分の届出先の自治体での運用が気になる場合は、当該市区町村の戸籍担当窓口に確認するのが確実です。
まとめ
- 死亡届の届出人は戸籍法第87条で限定されており、従来、任意後見契約のない身元保証会社(高齢者等終身サポート事業者)は死亡届を出せなかった
- 2024年6月のガイドラインでは「今後の課題」とされていたが、2025年10月頃の法務省事務連絡により、死亡地が本人の居所であり、生前から立入り・見守り等の委託を受けている場合に限って、事業者代表者が「家屋管理人」として死亡届を提出できる(提出義務を負う)ことが明確化された
- 死後事務委任契約だけでは足りず、生前からの見守りを含む契約が前提となる。また届出は義務であり、代表者個人としての署名が必要になるなど、実務上の留意点も多い
身寄りのない方にとって、「死亡届を確実に出してもらえる」ことは、葬儀・火葬・納骨といったその後のすべての手続きの入口です。終身サポートサービスの利用を検討する際は、生前の見守りから死後事務までが切れ目なくつながる契約になっているかを、ぜひ確認してみてください。
参考資料
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一般社団法人あんしんの輪では、日々の「見守り・安否確認」から、万が一の際の「死亡届の提出」「死後事務」までを途切れずカバーする包括的なサポートをご用意しています。おひとりさまの将来に不安を感じている方は、ぜひ一度無料相談をご利用ください。
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